東京都教育委員会の決定により、2022年度の都立高校入試において(2022年11月実施)英語のスピーキングテストが導入されました。
これは都立高校入試のここ30年の歴史において、マークシートが導入されたことに次ぐ最大の変革だと言えます。
専用のタブレット端末やイヤホンを使い、生徒の解答をデータに録音してそれをフィリピンで採点します。
スピーキングテストの結果はA~Fの6段階で示され、それを20点満点で換算されます。
2022年以降の都立高入試は、
- 学力検査(700点満点)
- 調査書の点数(300点満点)
- スピーキングテストの点数(20点満点)
の合計1020点満点で、入試の合否が決定するという流れです。
20点ですから合否を大きく左右する要素にはなりえないかもしれませんが、やはり平均点くらいは取っておかないと入試で足を引っ張ることにはるでしょうから、都立高の受験生は最低限のスピーキング対策が求められるでしょう。
英語スピーキングテストの導入で巻き起こった議論
東京都教育委員会だけでスピーイングテストを実施するわけではなく、民間企業のベネッセコーポレーションと協定を結び、事業主体は東京都教育委員会、試験の運営主体はベネッセコーポレーションという共同実施による高校入試に変わりました。
もちろんこの導入にあたっては、英語教育者の間でも賛否両論が分かれて大きな議論がされました。
中学生の学習指導要領で求められる英語の4技能「読む・書く・聞く・話す」のうち、子供たちの「話す力」を評価する術が今まではありませんでした。
ですから、今後はそれを評価できるようにするためにも、スピーキングテストの導入は良いことだ、という賛成意見もありました。
しかし、圧倒的に反対意見の方が多かったのも事実です。
最も多かった反対意見としては、「大学入学共通テストでもスピーキングテストの導入は現実的ではないということで見送ったのに、都立高校の入試で導入するというのは理屈が通らない」というものでした。
また、中学校の英語の授業だけではまともにスピーキング対策ができるとも考えずらく、家庭の経済格差などが入試結果に大きく左右されるという声もありましたし、吃音症状を持っている子供には不利だと反発して、東京都教育委員会に対して抗議文を送りつける親御さんも現れました。
さらには、都立高校受験の試験監督は外部人材を活用している点や、スピーキングテストの音声の採点をフィリピンで行うなどの面から、「一人の子供の人生がかかっているにも関わらず、そのような外部の得たいの知れない人に任せて良いものなのか?」という鋭い指摘の声もあがりました。
読む・書く・聞くに加えて「話す」スピーキング対策は必須になる
しかし既に決定して実施されたことですから、もう覆ることは考えずらく、2023年、2034年以降の都立高校入試でもスピーキングテストは実施されるでしょう。
日本のこれまでの英語教育は「読む」「書く」「聞く」に偏っていたのも事実で、高校入試、大学入試、英検、TOEICなどのどの試験をとってみてもスピーキングの要素が抜けています。
これこそが日本人が英語をいくら勉強しても話せるようにならない最大の原因だと言えるでしょう。
実際、そのような問題を解決するためにも、今の社会の流れはVERSANTやIELTSに代表されるように「英会話力を測るテスト」の評価が年々高まっていて、数多くの企業や団体が英語ができる人材を確保するためにVERSANTやIELTSによるスピーキング力を見ています。
ですから、それを考えれば高校入試でもスピーキングテストが導入されたのも自然な流れです。
どちらにしろいずれは導入されたと考えれば、結局は導入決定は時間の問題だったと言えます。
気軽にできる英語スピーキング対策はシャドーイング
最後に、では都立高受験生は英語スピーキング対策はどうすれば良いのか?ということについても触れておきます。
ネイティブ講師とのオンライン英会話などが受けられれば、その対策がベストかもしれませんが、経済的なことを考えれば現実的ではありません。
そこでおすすめなのがシャドーイング(Shadowing)です。
シャドーイングは、英語を聞きながらそれを真似して発音する通訳訓練法のことです。アクセント、イントネーションもそのまま真似するわけですね。
もともとは同時通訳者のための訓練方法として知られていましたが、英語学習者のスピーキングやリスニング力の強化にも非常に役立ちます。
とにかく口に出して練習しないことには英語のスピーキングは絶対に上達しません。
ネイティブの音声を聞き、それをそっくりそのまま自分では話してみるのです。真似をすれば良いでしょう。
ただし、ただ英語の音声を聞き流すだけでは上達しません。
音声を聞いているだけでみんな英語が聞き取れて話せるようにもなるんだったら、毎日毎日英語の音声をかけ続けているでしょう。
しかし、そうではないからこそスピーキングはしっかりと対策する必要があります。
必ず英語の単語やフレーズの意味を理解して、納得した上でネイティブの音声を繰り返しシャドーイングしましょう。
シャドーイングに良い教材などは色々ありますが、NHKのラジオ英会話などはアプリでも出ているのでスマホ一つあればシャドーイングの勉強もできておすすめです。